今日の読書メモは「国が亡びるというということ」。竹中平蔵氏と佐藤優氏の対談を本にしたもの。民主党政権時代のもので現状との状況のズレはあるものの、現場の当事者が語る話からは、日本が置かれている状況、外交や政策運営の現場の課題などがリアリティを持って感じることができ、知的好奇心をくすぐられる。 日本はどうなっていくのか、読んだ人には読んだ人の分だけ「気になる、学びたくなる点」が出てくるような 本だと感じました。
あくまで、今の自分がちょっと気になったポイントをメモ。
目次
経済学を学ぶのならまず簿記3級をとれ、それがスタート
外交官に対しても高校の政治経済と倫理社会の教科書を抑えるように言っている。自助努力なくして力なし。
勉強には天井があるものとないものがある
英語1級には天井があるけれど、英語の達人には天井はない。仕事に使うものと教養、とわけたり、技術と知識と分けたり。「勉強」を二つのものに分けるという考え方が面白い。技術の方にも天井がないもの、知識の中にも一つ一つ区切りをクリアしなければならないものがあったりする。そのあたりを竹中氏の「マトリクス勉強法」で整理がされている。
政策はプラグマティック、リアリズムの先にあるもの
マルクスもケインズも目の前の課題解決に向けた素材を提供し続けた結果が「思想」となって残ったもの。政策の運営も同じこと。
マルクスの「資本論」は労働者向けではない
明らかに、資本家に向けた資本の運動について書かれている。労働者が資本家と戦うための論理は書かれていない。 日本が元気がないのは、資本過剰、「投資先がない」から。世界も同じ問題に直面し始めている。
TPPと対中国の外交戦略
TPPは外交的にも大義があり、経済的にもメリットが大きい。GDP10年で2.7兆円という試算も。生産者余剰と消費者余剰が高まる。 またTPPは単なる自由貿易協定ではない、アメリカの環太平洋戦略に則った貿易協定である。ロシアは日本と米国の同盟の深化と状況を正しく捉えていた。中国はうろたえた。 対中国に対して、いかに国際ルールの中に取り込んでいけるかが外交上のスタンスとして重要となってくる。中国は既存のルールを無視しようとしている。TPPはその中で中国を国際ルールを守らせ、国際秩序を守るためにも重要な話。
教養が身につく本を教えてくれと質問してくる人
内容を理解せずに書かれていることを覚え答案用紙に再現する受験勉強のようなゲーム的な勉強しかしない人が増えている。教養などは自身で高みを追及をしていくもの。自分自身を高めるために時間を費やしていくしかない。ここに時間を取らない人が非常に増えている。もはや社会問題。
人間は得ることよりも失うことに強く反応する
資本家は利潤の分配でもめることはほとんどないが、損失については熾烈な争いが起こる。 また、アンケートをとるときに結果をコントロールすることは可能。 どちらに賛成かと問う。その際に平均値を示すと人はその基準値に引きずられる。 人は独立的にきちんと判断できる側面と簡単に流されてしまうあやふやさの両面を持っていると理解することが重要。政治経済のかじ取りにおいては、この動物行動学のような視点で人間の行動を理解しておくことも非常に重要。
対アメリカに対するスタンス
傘に守られている前提の中で一定の制約を受けながら判断をせざるをえないことは確か。一方でそのアメリカがアメリカ自身の利潤のためにバイアスをかけてくるポイントが必ずある、そこを見落とさない、見抜くことが求められる。
後藤新平のビックピクチャー
関東大震災で、当時の40億の復興プランを立てた。現状の価値に換算して200兆円。 大きな絵をえがいたからこそ重要なポイントにきちんとお金をかけることができた。今の復興も本当に急がないといけない。