【読書メモ】これから働き方はどう変わるのか 田坂広志

今日紹介するのは、田坂さんの書の一つ。 公演も聞いたが、胸に刺さる言葉が多い。自分が気になったところを抜粋。

「あのピッチャーは、自分の可能性を引き出してくれるピッチャーです。だから、自分もあのピッチャーの可能性を引き出せるバッターになりたいですね」
普通なら「苦手」と呼びたくなる相手も、自分のプロフェッショナルとしての可能性を引き出してくれる素晴らしい相手。打撃の能力が磨かれていくことそのものが、大きな喜びであり大切な報酬。
仕事のプロフェッショナルは仕事を通じて「能力」が磨かれることそのものを喜びと感じる。それを仕事の報酬と考えている。

熱を込めてプレゼンをすればするほど顧客の気持ちが離れる時、ある日その繰り返しの中で気づく。スキルを身につけても、その先に顧客を大切にする「心得」がしっかりとなければそのスキルは本当に力を発揮することはできない。
仕事に一生懸命取り組むと、そして、能力を発揮しようと努力すると、自然に「人間としての成長」を遂げることができる。

「職業人としての能力」は、時が経つにつれ、力が衰えることもあれば、その能力そのものが陳腐化し、不要になってしまうこともある。「働きがいのある仕事」も時が経ち、仲間や顧客の心からその仕事が忘れ去られるとともに、消えていくほうしゅうです。しかし、この「人間としての成長」は、我々の人生が終わるまで、決して失われることのない、素晴らしい報酬なのです。

「収入」「地位」という目に見える報酬と、「能力」「仕事」「成長」という目に見えない3つの報酬がある。どうしても目に見える報酬に目がいくが、「働く喜び」をとりもどすならこの見えない報酬を見つめなければならない。 そして、この目に見えない3つの報酬は「自ら求めて得るべき報酬」であり、「収入」「地位」は「結果として得られる報酬」です。

「彼の能力を磨いたから、自分の能力が磨けなかった」「彼女が働きがいのある仕事をしているから、自分は働きがいのある仕事ができない」「あの人が人間的に成長したから、自分が成長できなくなった」といいうことはおこらない。むしろ逆。全く逆。能力、仕事、成長という報酬は極めて人間的な「プラスサムの報酬」なのです。誰もが努力次第で、その報酬を手に入れることができ、皆で協力して、そんお報酬を大きくすることができるのです。

それは、決して「孤独な歩み」でもなければ「孤独な挑戦」でもありません。
もしあなたが、そうした「社会貢献」の志や使命感を抱き、思いを定め、小さな一歩を踏み出すならば、まず家族や友人が、そして職場で働く仲間や仕事で縁を得た人々が、必ずあなたを応援してくれるでしょう。なぜなら、社会のためになる仕事をしたい。 その願いは、誰の心の中にも、あるからです。

ドイツの観念論哲学者ゲオルギ・ヘーゲルがその弁証法の哲学の中で「事物の相互浸透」ということを述べています。これは「対立物の闘争による相互浸透」とも呼ばれている法則のことですが、わかりやすく言えば、この世の中の物事は、全く逆の性質をもった対立するもの同士が、闘争のプロセスを経て、互いに「相互浸透」を起こし、互いに似通ってくるという法則のこと。こうした例は世の中を見渡していると随所に見受けられる。 社会起業家としての歩みを始めるということは、実はこうした21世紀における企業や組織の進化の姿をいち早く、一人一人の働き方のレベルで実現していくことに他ならない。

いままでの「起業家」と「起業家精神を持って活動する人」という言葉の境界が消えつつある。「起業家」と「変革者」(イノベータ)が同義語になっていく世界。

第1は何度失敗してもくじけずに挑戦し続ける「志」と「使命感」。失敗しない事業はない。第2の資質は、周囲に能力ある人が集まる「人間的魅力」と「共感力」です。資金力も組織力もなければ人間的魅力と共感力です。

この二人の石切職人は、仕事そのものは、毎日、同じ仕事をしているのです。しかし、この二人の働き方は、全く違った働き方なのです。そして、その違いはほんのわずかな視点の違いだけなのです。

一人はその石切の仕事を生活のためにやらなければならない苦役と思い。 もう一人は、それを多くの人々のためになる、素晴らしい仕事と捉えている。その違いだけなのです。
では、我々はどうか。自分の仕事を「給与と引き換えに会社に命じられた仕事」と思い、自分自身を「労働者」とみるか、それとも自分の仕事の彼方に、たしかな「社会貢献」を見つめ、自分自身を「社会起業家」として見つめるか。 そのわずかな視点の転換が、我々の働き方を大きく変えるのです。

そして、我々が、ひとたび、その視点の転換を行い、たとえ小さくとも、たしかな一歩を踏み出すならば、我々は、どんな社会的立場にあろうとも、どのような職業的分野にあろうとも、その持てる力と置かれた立場に応じて、自由に、そして、柔軟に「社会起業家」としての歩みを始めることができるのです。

ある社会起業家は、「環境問題の解決に貢献したい」との「志」と「使命感」を持っていますが、それを「日本においてバイオ技術を使った環境評価事業を起こそう」という明確なビジョンとして描き、それを力強く語り、実際に事業にお取り組んでいます。 魅力のない「ビジョン」には経営者やマネージャの「志」や「使命感」をもってビジョンをかっっていないから。熱ないものに魅力はない。

「志」と「使命感」を語るだけでは実現することはできない。第1は「自己変革」を通じて、「職業的能力」を磨くこと。第2は「人間成長」を通じて、「人間的魅力」を高めていくことです。  なぜ「人間的成長、人間的魅力を高めること」が大切か。 その社会起業家の持つ「志」と「使命感」はその人物の「人間性」や「人間的魅力」に体現されるからです。
同じ職場で働く仲間に対して「良き仲間」であろうとする人間成長の努力を抜きにして、同じ時代を生きる人々にとっての「良き社会」は決して生み出すことはできない。

社会起業家が身につけるべきは、「相手の共感を得る力」ではありません。「相手に共感する力」。仲間に深く共感する力を持たない人間が、仲間からの共感を得ることが結成てないように、何よりも大切なのは、他者の悲しみや苦しみに共感する力です。それこそが社会起業家にとっての原点であり、社会起業家にとって最も大切な力です。

「大きな革新」「大きな事業」より 日々取り組んでいる仕事の「小さな革新」たとえ小さな一歩でも良いから、事業の革新や想像に取り組むということ。それは、けっして「自分一人でも何かを成し遂げる」というスタイルではありません。それは「仲間と共に何かを成し遂げていく」というスタイル。

それは「社会貢献の志をもって新しい事業を起こす人」という意味ではなく、「社会変革の運動の創出によって新しい社会を起こす人」という意味。

これまでの時代の「社会変革」の基本的な考え方は「設計・構築・管理」の発想に基づく「機械論的な変革のパラダイム」でしたが、これからの時代には、それが「創発・自己組織化」の思想に基づく「生命論的な変革のパラダイム」へと変わっていく。そしてこの日本という国において活動する社会起業家は「生命論的な変革のパラダイム」ということを考えるとき、それが21世紀における新しい変革のスタイルであることを理解すると共に、東洋思想に深く根ざした変革の思想であることを、理解しなければなりません。

しばし、運や偶然である。ほんのわずかな差でしかない。
我々に、本当に問われているものは、「いかにして勝つか」や「いかにして成功するか」ではない。本当に問われるのは、その逆の問いなのです。それは
全力を尽くしてなお、敗北や失敗に直面したとき、そのとき、自分を支える思想を持っているか。 その問いなのです。

建築家は洗練されたデザインの家を残し、エンジニアが最先端の機能の製品を残し、ホテルマンが心ん居残る最高のサービスを残すように、我々は仕事を通して、心を込めた「作品」を残していきます。
社会起業家には、もう一つ大切な「作品」がある。それはその人の「歩み」です。 その人生をどのように歩んだか。その人生をどのように歩み続けたか。それ自身が一つの「作品」なのです。 「生涯にわたって社会変革の歩みを続けること」それは「最高の作品」なのです。一代でなす「野心」ではなく、「礎」になることを覚悟している。いつか、必ずやってくる「良き社会」 その「礎」になることを、 静かな喜びとともに、覚悟しているのです。

スポンサーリンク

シェアする

フォローする